第9回目は、黒崎の隠れ家的ビアバー「DAIMARU」(ダイマル)をご紹介いたします。
「DAIMARU」は黒崎駅前のふれあい通りを西方向へ入った所で、
グリンパーク三共ビル1階の階段裏の奥まったところにある1989年に開店したお店です。
ビールはイギリスの樽生バス・ペールエール、樽生ピルスナーはアサヒ熟巽(アルコール6%)、樽生エビスプレミアムブラック、樽生ベルビュークリーク(期間限定)、瓶ビールスタウト(アサヒ)が常時飲めます。
お店は温かい色の木目を基調とした空間で厨房を取り囲むようにカウンター席があります。
英国を代表するペールエール「バス・ペールエール」
バス・ペールエールは、イギリスを代表する英国王室の御用達エールビールで、赤い“三角形”とロゴの“Bass”のデザインが象徴的です。
1777年にバートン・アポン・トレントという街に設立されたBass 醸造所で造られました。
トレードマークの“赤い三角印”はイギリス初の登録商標であることも有名です。
設立から100年後には世界一大きい醸造所に成長し、世界各地に輸出されるようになりました。
明治時代の日本でもバス・ペールエールが輸入ビールのダントツ1位で、当時の国産ビールには赤い三角印のロゴをパクって使ったものもあったほどです。
苦味とフルーティーなエステル香があり、味わいはすっきりとしています。
バス・ペールエールの樽生が常時飲めるのは北九州市では「DAIMARU」のみです。
(小田良治著 「ビール入門」参考)
世界に羽ばたくスタウト
「強い」という意味を持つ「スタウト」とは、
7~12%程度のアルコール度数の高いビール全般を指す言葉でした。
18世紀後半、イギリスからバルト海沿岸に向けて高アルコールビールが輸出されていました。
そしてそのビールがロシア女帝エカテリーナ2世のお気に入りとなり、イギリス醸造所がロシア皇帝のウケを狙って醸造したスタイルは、インペリアル(皇帝の)・スタウトと呼ばれました。
重厚なモルト感、鮮烈なホップの苦味、気品のあるエステル香でリッチな味わいのあるビールです。
スタウトにはいくつか種類があります。
ギネスが生んだ“ドライスタウト”は甘くないビールです。
“スィートスタウト”はクリーム・スタウトとも呼ばれチョコレート香とカラメル香が際立つ甘いフルボディのビールです。
“オイスタースタウト”は、もとは牡蠣(オイスター)を食べる合間に飲むスタウトのことでしたが、今では醸造に牡蠣を使用したビールを指しています。
“オートミールスタウト”は、原料にオーツ麦を加えたスタウトです。
“フォーリンスタウト”はドライスタウトが他国で進化したもので、アルコールは比較的高め(6~8%)です。
スリランカ(旧セイロン)のライオンスタウト、日本のキリンとアサヒが造っているスタウトは世界的にも高い評価を受けています。
アサヒスタウトの瓶ビールは「DAIMARU」で常時飲めます。
(リース恵実箸 「ビール語辞典」、藤原ヒロユキ著「知識ゼロからのビール入門」参考)
本格的こだわりビールを提供する「DAIMARU」
「DAIMARU」のビールサーバーは40年前まで主流だった円筒式の氷冷サーバーを使っています。
日本初のビアホール、東京銀座ライオンで現在も使用しているサーバーと同じです。
円筒内に入っている氷は、パイプの中をビールがすごい圧力でぐるぐる回っている間に温まるのを防ぐためのものです。
パイプ内に流れるビールの勢いを制御する注ぎの技に熟練を要します。
「DAIMARU」のマスター白石裕三さんは、今は亡き、新井徳司さんを実際に訪ね独学でビールの注ぎ方を研究されました。
新井徳司さんとは東京八重洲にあったお店「灘コロンビア」(通称灘コロ)のビール注ぎの名人であり、新井さんの円筒サーバーとビールの注ぎの技術は日本一だと伝説です。
(ビール好き作家・椎名誠著「今この人が好きだ」にも新井さんのインタビューが載っています。)
白石さんによると、円筒サーバーの「洗浄」「温度調整」と、ビールの「温度」「グラス」が美味しいビールには重要です。
「DAIMARU」で提供するエールビールの温度は、夏は7℃、冬は9℃に、ラガービールは4~5℃に調整します。
日々の天気や気温によってもビールの温度を変えるほど、常に本当のビールの香りを味わってほしいと職人の思いが伝わってきます。
日本でも希少なサーバーを愛する「DAIMARU」マスターの注ぎの技を是非見ていただきたいです。
「DAIMARU」のワインラック、おしぼり棚、ビール看板などお店には多くの木工品であふれています。
実はすべて白石さんが造ったもので、木工品造りは20代からの趣味だそうです。
どの作品も職人技が感じられます。
暖かい色の木目に囲まれながらカウンターの向こうから美味しいビール注いでくれるマスターの話も楽しいですよ。
おいしいビールを飲みましょう。
(著者)Mieko.M
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