第10回目は、2013年にオープンした「ソーセージ工房河原& Misono Cafeをご紹介いたします。
JR戸畑駅から若戸大橋側の西戸畑市民センター近くにあるソーセージ工房河原では、手作りソーセージやパテ・ド・カンパーニュなどを製造、販売しています。Misono Cafeも併設されており、ソフトドリンクや軽食はもちろんのこと、手作りソーセージにビールやワインも楽しめます。瓶ビールだけの提供ですが、ベルギー、ドイツ、イギリス、タイ、メキシコ、スリランカ、日本の門司港地ビールなど20種類ほどの世界のビールがあります。また、ワインやスパークリングワインも数種類あり、とてもお洒落なカフェです。
店内にはピアノ、ギターなどあります。御園さんの素敵な歌声をご披露されるかも。「生」ビールにこだわるニッポン
日本では「生」か「生でない」にこだわる傾向にあります。冷凍技術が未発達だった頃、ビールを安定的に生産するには熱処理を行って殺菌し品質を保持していました。1967(昭和42)年にサントリーが精密なろ過装置を使い、熱処理をせずに酵母菌を取り除いたビールを「生」として販売しました。1979(昭和54)年に「熱処理をしないビール」が「生ビールまたはドラフトビール」と定義されたため、今ではほぼすべての大手ビールの瓶も缶も「生ビール」です。しかし、海外ではなるべく酵母が生きた状態のビールが好まれます。日本のように精密フィルターでろ過すると酵母のみならず、香味成分も除去されてしまいます。ビールの本質としては「生か否か」ではなく「美味しいかどうか」ですね。
多彩なビールの世界、ベルギービール
九州より小さな国土のベルギーには約140か所以上の醸造所があり、800銘柄を超えるビールが造られています。イタリアや南フランスのようにブドウが豊富に取れる地方では、お酒と言えばワインでしたが、ベルギーではブドウがあまりとれませんでした。そのため、食前用の低アルコールビール、どっしりとパンチのある食中酒のビール、デザートと合わせる濃厚な食後のビールと、一晩ではとても楽しみきれないほどのバリエーションがあります。Misono Cafeでも食前から食後まで楽しめる、多彩な瓶ビールを取り揃えています。
ヨーロッパの修道院ではビールを造っている!
トラピストビールはトラピスト会の修道院で造られるビールのことで、ビールのタイプではありません。今日ではベルギーを中心に世界で11の現役トラピスト醸造所が存在します。修道院では「飲む」ことは神聖な行為とされていたので、断食期間中でもビールを飲むことは許されていました。このため濃厚で栄養価の高いビールが造られ食事代わりとされていたのです。トラピストビールはボトルに詰めるときに砂糖と酵母が加えられるので、ボトル中でも発酵され熟成が進みます。これを瓶内発酵と言い貯蔵しているうちに豊潤な香りとまろやかな味が生まれます。製造後の開栓時期によってビールの変化を味わえるのは、瓶内熟成ビールの楽しみ方の1つです。
「シメイ」は最も有名なトラピストビールで、ノートルダム・ド・スクールモン修道院が造っています。「オルヴァル」は世界でも個性的なビールの1つでオルヴァル修道院が造っています。「ロシュフォール」はサン=レミ修道院が造る、色がダークで甘みのあるビールです。
アビィ(修道院という意味)は、修道院で造られていたビールを外部の醸造所が修道院に代わって造るビールです。「レフ」はアビィビールの中でも最も有名な銘柄です。
ソーセージ職人とソプラノ歌手の御夫婦が営む素敵なお店
ソーセージ工房河原のオーナーでソーセージ職人でもある、河原一貴さんは肉の卸業の仕事をされていました。上質な肉でソーセージを作りたいとの思いでヤギシタハムに就職され技術を勉強されました。
ハム・ソーセージの歴史は古く、19世紀ごろまでは各家庭で家族の分だけハムをつくるのが一般的でした。20世紀に入ると食肉生産はオートメーション化され、冷凍や冷蔵運搬技術の発達により家内工業から大量生産が可能な近代的産業へ発展しました。河原さんは19世紀ヨーロッパでのソーセージレシピを研究されています。店頭に並んでいるソーセージは、肉の純度や脂量の加減を当時のレシピ通りに再現させ手作業で造られたものです。
残念ながら河原さんは、ビールはあまり得意ではなくもっぱらワイン専門のようです。しかし、ビールとソーセージの相性は抜群なので、今後は、ベルギービールに合うソーセージ造りもイメージされているようです。
一方、Misono Cafeの店主、野見山御園さんは河原さんの奥様であり、実は本業はソプラノ歌手で、大学の声楽科を卒業後、イタリア、ドイツ、オーストリアへ訪れ、オペラの勉強をされました。今では北九州市を拠点として演奏活動をされながら、カフェの経営と両立されています。店内のピアノを弾きながら歌の練習をされ、普段の愛らしい喋り方からは想像もできないほどの大きな伸びのある声量は感動的です。記念日やお祝いなどで来店されたお客さんに、素敵な歌声をご披露されることもあるようです。
御園さんは「声帯に刺激物は禁物」との理由でヨーロッパ在留中お酒はあまり飲んでないそうです。帰国後、ベルギービールに出会ってその感動から、Misono Cafeではビールの担当をされています。
美味しいソーセージとビール、御園さんとの楽しい会話で素敵な時間を過ごしませんか。
おいしいビールを飲みましょう。
(著者)M.Mieko
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