スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは、文部科学省が科学技術・理科、数学教育研究を重点的に行う高等学校を指定する研究事業で、現在全国で101校が指定を受けており、北九州市にある「小倉高校」も、その一校です。
SSH指定校では、大学や研究機関と連携して魅力的なカリキュラムを開発するなど、科学技術に夢と希望を持つ創造性豊かな人材の育成に取り組むほか、学術拠点として地域へ成果の普及を行っています。
2015年9月8日に小倉高校SSHのみなさんが、リバーウォーク北九州の14階にある「地図の資料館」にて、勉強会を実施しました。
40名の生徒さんが5つの分野に分かれて「GIS(Geo Graphic Information System)を活用して“現状の把握”と“課題”を明確化させることにより判る“ギャップ”を“手段(GIS)”を利用して埋めていく過程を感じ取っていただこうという趣旨の勉強会を実施しました。
当日担当講師
1班 地図・歴史分野:株式会社ゼンリン
2班 統計分野 :株式会社NTTドコモ
3班 航測分野 :株式会社パスコ
4班 化学分野 :ESRIジャパン株式会社
5班 電力分野 :九州工業大学&北九州市
当日のスケジュール
9:00~10:00 ゼンリン地図の資料館の見学
10:00~12:00 全体MTG後、各班に分かれた講義
13:00~15:00 各班に分かれた講義
15:00~16:00 全体ワークショップ & まとめ
1班 地図・歴史分野
地図・歴史分野では、「テーマ」をもとに実際に地図を片手に街を歩きながら、課題を抽出し、一つの結論を導きだしました。
午前中は、株式会社ゼンリンの発展の歴史、配信地図やカーナビ、消防・警察などの各分野で地図が使われていることや、調査業務として“歩行調査”だけではなく、“計測車両”を使い様々な情報を調査していることなどを説明。午後は、地図を手に実際に小倉の街を歩き、気づいたことなどについてディスカッションを行いました。
街歩きをして気づいた点を「環境」と「防災」に関わることに分類し、「環境を変えることにより防災力が向上する」という一つの結論を導き、全体ワークショップにて発表しました。
2班 統計分野
統計分野では、大きく3つのテーマに基づき、統計について学習しました。
基礎知識の醸成(統計とは/モバイル空間統計とは/様々な統計データ/統計でみる北九州市)
様々な統計の特徴を解説し、統計は正しく読み解くための考え方であることを説明。ICT(Information and communication technology)を使った新たな統計の特徴理解をポイントとしました。
統計の実践的活用イメージ(統計の様々な活用例の紹介/統計を活用し北九州市の課題探究)
統計が世の中でどのように役立っているかの理解と身近なテーマを考察することによる理解の深化をポイントとしました。
グループワーク(北九州市が抱える課題の解決策検討)
地元の抱える問題を自ら考える機会とし、地元と統計双方への理解の深化をポイントとしました。
3班 航測分野
航測分野では、「三次元」をキーワードに、測量の基礎知識について学びながら、最新の航測技術により作成した詳細三次元情報に触れることで、市民に役立つ活用方法について学習しました。主な内容は、ADS80という機材を用いて計測されたデータを基に、50cm間隔で地表の起伏を表現した北九州市の詳細三次元情報(50cmDSM)を活用して、自分達の住んでいる家が何mの水位で浸水するのかを専用ソフトウェアを活用して実際にシミュレーションしてもらいながら、安全な避難路や避難地を確認してもらいました。
また、最新の計測機材であるオブリークカメラを使ったデータにも触れてもらうことで、航測技術の進歩を体験してもらいました。
4班 化学分野
化学分野では、小倉城周辺の二酸化炭素濃度を計測し、地図上に可視化するというテーマで、地理空間データを作成・分析・可視化・共有することを目的として講義を行いました。
まず、午前中に4人1班で2班に分かれて小倉城周辺の二酸化炭素濃度を屋外で実際に計測し、タブレットを使い地図上にデータを入力しました。(作成)
午後は、効果的な二酸化炭素濃度の見せ方について議論しました。
計測したデータを使ってどのように表現するとわかりやすい地図になるか、学生に議論してもらいながら実際にブラウザ上で地図を作成しました。(可視化)
また、作成した地図を見ながらどのような場所で二酸化炭素濃度が高いか、あるいは低いかを議論してもらいました。(分析)
最後に全員で地図を利用することの利点を話し合いました。
5班 電力分野
電力分野では、電気自動車によるスマートフォンやタブレット、電気ケトル及びLEDライトへの給電実証を行いました。使用した電気自動車は、九州工業大学が保有する三菱自動車のi-MiEVです。スマートフォンやタブレットでは、約25分の給電で20%程度の電力を充電できることを確認しました。
次に、G-mottyの「日射量マップ」を見ながら太陽光発電に適している屋根や土地を確認しました。
最後にGISを利用してエネルギー分野に役立つ工業製品を作り出すというテーマでワークショップを実施して、電力分野の1日の活動内容をまとめました。